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名古屋地方裁判所 平成9年(ワ)4209号 判決

原告

甲野太郎

外三名

右四名訴訟代理人弁護士

田中智之

被告

名古屋管理職ユニオン

(旧名称・全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン名古屋支部)

右代表者執行委員長

戊三郎

被告

東京管理職ユニオン

(旧名称・全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン)

右代表者執行委員長

橋本忠治郎

右二名訴訟代理人弁護士

高木輝雄

海道宏実

後藤潤一郎

山内一浩

主文

一  原告乙野次郎及び原告A・B・トミーが、被告名古屋管理職ユニオン及び被告東京管理職ユニオンの各組合員資格をそれぞれ有することを確認する。

二  被告らは、原告甲野太郎に対し、連帯して金一〇万円及びこれに対する被告名古屋管理職ユニオンは平成九年一一月二〇日から、被告東京管理職ユニオンは同月二九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告丙野一郎に対し、連帯して金一〇万円及びこれに対する被告名古屋管理職ユニオンは平成九年一一月二〇日から、被告東京管理職ユニオンは同月二九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告らは、原告乙野次郎に対し、連帯して金二〇万円及びこれに対する被告名古屋管理職ユニオンは平成九年一一月二〇日から、被告東京管理職ユニオンは同月二九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  被告らは、原告A・B・トミーに対し、連帯して金二〇万円及びこれに対する被告名古屋管理職ユニオンは平成九年一一月二〇日から、被告東京管理職ユニオンは同月二九日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  原告らの被告らに対するその余の請求をいすれも棄却する。

七  訴訟費用は、原告甲野太郎に生じた費用の三分の二及び被告らに生じた費用の各六分の一を原告甲野太郎の負担とし、原告丙野一郎に生じた費用の三分の二及び被告らに生じた費用の各六分の一を原告丙野一郎の負担とし、原告乙野次郎に生じた費用の三分の一及び被告らに生じた費用の各一二分の一を原告乙野次郎の負担とし、原告A・B・トミーに生じた費用の三分の一及び被告らに生じた費用の各一二分の一を原告A・B・トミーの負担とし、被告名古屋管理職ユニオンに生じた費用の二分の一、原告甲野太郎、原告丙野一郎に生じた費用の各三分の一及び原告乙野次郎、原告A・B・トミーに生じた費用の各三分の二を被告名古屋管理職ユニオンの負担とし、被告東京管理職ユニオンに生じた費用の二分の一、原告甲野太郎、原告丙野一郎に生じた費用の各三分の一及び原告乙野次郎、原告A・B・トミーに生じた費用の各三分の二を被告東京管理職ユニオンの負担とする。

八  この判決は、第二項ないし第五項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  原告らが、被告名古屋管理職ユニオン及び被告東京管理職ユニオンの各組合員資格をそれぞれ有することを確認する。

二  被告らは、原告らに対し、連帯して、各金三〇万円及び訴状送達の日の翌日(被告名古屋管理職ユニオンについては平成九年一一月二〇日、被告東京管理職ユニオンについては同月二九日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告各自に対し、被告名古屋管理職ユニオンは、中日新聞の朝刊全域版広告欄に、縦二段横四センチメートルのスペースで別紙謝罪広告目録(一)に記載された謝罪広告を、被告東京管理職ユニオンは、中日新聞の朝刊全域版広告欄に、縦二段横四センチメートルのスペースで別紙謝罪広告目録(二)に記載された謝罪広告を、それぞれ掲載せよ。

第二  事案の概要

本件は、被告東京管理職ユニオン(旧名称は、全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン。以下「被告東京管理職ユニオン」という。)の支部として発足した被告名古屋管理職ユニオン(発足当時の名称は、全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオン名古屋支部。以下「被告名古屋管理職ユニオン」という。)が、被告東京管理職ユニオンと協議の上、原告らに対し、原告らの行動が組合組織を混乱させるものであったなどとして、組合員資格喪失処分をなしたのに対し、原告らが、右組合員資格喪失処分は組合規約にない違法なものであり、かつ、処分事由も存しないから、手続的にも実体的にも無効であるとし、さらに、その後、被告東京管理職ユニオンが原告らに対してなした除名処分も違法、無効であるとして、被告らに対し、それぞれの組合員であることの確認を求めるとともに、右組合員資格喪失処分によって精神的損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた事案である。

一  前提事実(特に証拠を掲げる以外は、当事者間に争いのない事実)<省略>

二  争点

1  本件資格喪失処分及び本件除名処分の適法性

2  本件資格喪失処分によって原告らが被った損害の存否

3  原告らの組合員資格確認の利益の存否

三  争点に関する主張<省略>

第三  争点に対する判断

一  争点1(原告らに対する本件資格喪失処分及び本件除名処分の適法性)について

1  被告東京管理職ユニオンと被告名古屋管理職ユニオンの組織形態及び被告名古屋管理職ユニオン所属組合員に対する統制権の所在について

(一) 証拠によれば、次の各事実が認められる。

(1) 被告名古屋管理職ユニオン結成の経緯等(前提事実、乙一〇、二一、証人森園)

被告東京管理職ユニオンは、平成五年一二月、中高年齢者の管理職者層に対する人員削減、人件費切下げ策が遂行されるような不況下において、従来、非組合員として扱われていた管理職者の利益を擁護するために、管理職者も組合員たり得ることを表明して結成された個人加盟の労働組合であり、東京を中心として全国各地に組合員が点在していた。

そして、被告東京管理職ユニオンは、発足当初、首都圏以外の地域で労使紛争が起こった場合、東京から地方へ団体交渉に赴くという形で組合活動を進めていたが、これでは機動性を欠き経済的にも負担が大きいため、地方に支部組織を結成する必要性があるとして、平成七年五月一三日、被告東京管理職ユニオン名古屋地区会議において、当時、組合員も多く、多くの相談が寄せられていた名古屋地区に被告東京管理職ユニオンの支部組織を結成することが計画され、同年一〇月一五日、組合員数一九名で被告名古屋管理職ユニオンが結成された。

なお、被告名古屋管理職ユニオンは、本件除名処分後の平成一〇年七月一一日、規約を改訂して被告東京管理職ユニオンから独立した。

(2) 組合加入の方式について(乙二〇、証人森園)

被告らに対する加入申込書(乙二〇)は、被告東京管理職ユニオンが用意したものであり、「管理職ユニオン加入申込書」との表題の下に、「名古屋管理職ユニオン」の印が押され、さらに、その下に、「全労協全国一般東京労働組合管理職ユニオンに加入します。」と不動文字で印刷されていた。

そして、労働者が、被告名古屋管理職ユニオンにおいて組合加入を申し込む場合は、右加入申込書に氏名、住所等を記載し、加入金五〇〇〇円を納入することになっていたが、被告名古屋管理職ユニオンが、右加入申込書を郵送等の方法で被告東京管理職ユニオンに送付すると、被告東京管理職ユニオンにおいて、組合番号をとって名簿管理等を行うことになっていた。

(3) 組合財政について(甲一、二、三四、証人森園)

右(2)の組合加入金五〇〇〇円は、すべて被告東京管理職ユニオンに納入されることになっていた。また、本件資格喪失処分がなされた当時の一か月当たりの組合費は四〇〇〇円であり、これも被告名古屋管理職ユニオンを通して被告東京管理職ユニオンに納付され、そのうち一〇〇〇円を被告東京管理職ユニオンが活動費として使用し、残り三〇〇〇円は支部交付金として被告名古屋管理職ユニオンに交付されることになっていた(ただし、現実には、支部交付金を除いた金額を被告東京管理職ユニオンに送金する取扱いであったが、被告名古屋管理職ユニオンは、平成八年四月から平成九年三月までの送金分合計一一三万円の納入を怠っていた。)。

(4) 団体交渉等の組合活動について(乙二一、証人森園)

被告東京管理職ユニオンは、被告名古屋管理職ユニオンに所属する組合員の労働問題については、基本的に被告名古屋管理職ユニオンの判断において組合活動を展開する方針であり、団体交渉権は、執行委員会の決定により、被告名古屋管理職ユニオンに包括委任されていた。そして、被告東京管理職ユニオン執行委員長の印鑑は、被告名古屋管理職ユニオンに預けられており、右印鑑を使用して団体交渉要求書が被告らの連名で作成されることもあった。

また、被告東京管理職ユニオンは、被告名古屋管理職ユニオンから組合活動について協議、相談を受ければこれに応じてアドバイスし、団体交渉の応援を求められれば組合員を派遣する等していた。

(二) 右(一)の(1)ないし(4)の事実によれば、被告名古屋管理職ユニオンと被告東京管理職ユニオンの組織形態及び被告名古屋管理職ユニオン所属組合員に対する統制権については、次のように認めるのが相当である。

労働組合が、労働組合法上の単位組合に当たるか、連合体に当たるかは、その構成員が労働者個人であるか、労働組合であるかによって定まるものであるが(同法五条二項三号、五号、九号参照)、労働者が個人として加入している単位組合であって、その内部にそれ自体独自の労働組合といえる下部組織を有するものを、特に単一組合と呼んでいるところである。そして、この単一組合には、もともと一つの単位組合として成立していた企業別組合が、単一組織の上部組合を結成して、企業別組合ごとに支部と称している場合のように、下部組織の上部組合に対する独自性が強く、上部組合は各支部組合の連合体のごとき実体しか有しないものから、全国的規模を有する企業別組合におけるように、組合本部が直接組合員を把握して、内部統制を維持することが困難であるところから、地域別に地方本部等の下部組織を設け、これらの組織を通じて末端の組合員を把握し、組合活動及び内部統制を円滑かつ実効的になさしめるとともに、その組合活動にできるだけ末端組合員の意思を反映させるため、地方本部等の下部組織に一定限度の自治を認めているものまで存在する。

そして、被告名古屋管理職ユニオンと被告東京管理職ユニオンの組織形態は、右(一)の(1)ないし(4)のとおり、被告東京管理職ユニオンは個人加盟方式の全国単一労働組合であり、被告名古屋管理職ユニオンは、被告東京管理職ユニオンの活動を機動的、組織的に行うために、その下部組織として結成されたものであること、組合員らは被告東京管理職ユニオンにおいて組合員番号が付され、名簿登録等がなされていたこと、組合加入金及び組合費はすべて被告東京管理職ユニオンに納入され、そのうちの一部が交付金として被告名古屋管理職ユニオンに支給されるシステムであったこと、団体交渉権は、被告東京管理職ユニオン執行部の決定により、被告名古屋管理職ユニオンに包括委任されていたものであることを総合考慮すると、被告名古屋管理職ユニオンは、独自の規約と運営組織とを有する労働組合ではあるが、被告東京管理職ユニオンの組合活動及び内部統制を円滑かつ実効的になさしめるために組織された単一組合内における下部組織(いわゆる支部組合)ととらえるのが相当である。

すなわち、単位組合である被告東京管理職ユニオンは、組合活動及び内部統制を円滑かつ実効になさしめるために、比較的組合員がまとまって存在していた名古屋地区に支部組織として被告名古屋管理職ユニオンを設立し、労働組合としての独自の規約、運営組織をもたせ、労働三権の行使についても原則としてその自主的な判断に任せ、被告名古屋管理職ユニオンが成長し一人立ちできるようになった時点で独立させようとしたものであり、その後、被告名古屋管理職ユニオンが一人前になったと認められたことから、平成一〇年七月一一日、規約改訂により被告東京管理職ユニオンから分離独立したものであって、本件資格喪失処分及び本件除名処分がなされた当時は、その過渡的段階にあったものと認められる。

したがって、被告らの右の組織形態からすれば、被告名古屋管理職ユニオンはそれ自体一つの労働組合ではあるが、その独自性については被告東京管理職ユニオンの下部組織としての制限を受けざるを得ないものであり、これを組合員資格についてみれば、形式的には二つの組合員資格が存在するが、右は表裏一体の関係にあり、実質的には一つの組合員資格と観念すべきものである。

ところで、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有しているところ、本件のような単一組合においては、その支部組合に所属する組合員に対する制裁権限の配分は、組合規約又は慣行によってなされるのが通常である。

しかし、本件においては、東京管理職ユニオン規約にも名古屋管理職ユニオン規約にも制裁権限の配分を定めた規定はなく、その慣行も認められないから、条理によってこれを判断すべきところ、前記認定説示の被告らの組織形態及び被処分者の権利保護の要請からすれば、被告名古屋管理職ユニオンに第一次的な制裁権限を認め、被処分者に被告東京管理職ユニオンへの異議申立権を認めるか、あるいは、被告東京管理職ユニオンが直接制裁権限を行使するものとするかはともかくとして、被告名古屋管理職ユニオンに所属する組合員に対する制裁権限も、最終的には被告東京管理職ユニオンに帰属するものと解するのが合理的かつ適切である。

なお、名古屋管理職ユニオン規約には制裁規定が存在するが、同規約は東京管理職ユニオン規約を流用したものにすぎず、上部組織・下部組織の関係を全く意識していない不備なものと認められるから、右制裁規定の存在をもって、被告名古屋管理職ユニオンに独自かつ最終的な制裁権限が存在すると認めることはできない。

2  本件資格喪失処分及び本件除名処分に関する事実関係について

証拠によれば、次の事実が認められる。

(一) 本件資格喪失処分に至るまでの経緯

(1) ファイザー製薬セクハラ解雇問題について

イ 丁野は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員であったが、女子社員S(以下「S」という。)に対するセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という。)を理由として、平成八年一一月、ファイザー製薬から解雇された。そのため、被告名古屋管理職ユニオンは、右解雇問題についてファイザー製薬に抗議行動を行ったり、団体交渉をもったりしたが、右交渉は難航していた。

そこで、戊委員長は、Sに対し、平成九年一月八日、甲二七の手紙を郵送したが、右手紙には、丁野が実際にセクハラ行為をしたかどうかの事実を確認したいので、添付した報告書に事実を記載して返送してほしい旨記載され、最後に、「もし、この報告書が私の手元に届かなかったり、事実を押し曲げたりした内容であったならば、私共は貴女に対して厳しい態度をもって望まなければなりません。丁野さんが受けた屈辱の、二倍、三倍にして報復します。貴女が海外に脱出しようと、地の果てまでも追いかけて報復することを付言致します。」旨の脅迫的文言が記載されていた。なお、右手紙は、被告名古屋管理職ユニオンと「全労協全国一般東京労働組合執行委員長甲川某」との連名で出されているが、甲川某は全労協全国一般東京労働組合の執行委員長ではない上、戊委員長は、甲川某及び全労協全国一般東京労働組合の承諾を得ずに、右名義を冒用したものであった。

そして、Sが右手紙の受取を拒否すると、戊委員長は、ファイザー製薬の各支店に対し、Sの実名を掲げたまま右手紙をファックスで送信したため、Sの代理人弁護士は、同月二〇日付けの通知書により、被告名古屋管理職ユニオン及び被告東京管理職ユニオンに対し、民事、刑事両面での告訴も検討しているとして抗議した。

(甲一〇、一四、二七、乙二六の7、原告甲野本人)

ロ 被告東京管理職ユニオンは、近時、セクハラ問題は社会問題化しており、セクハラを理由とする解雇の問題については慎重に対応していく必要があると考え、ファイザー製薬セクハラ解雇問題について、被告名古屋管理職ユニオンにこのまま団体交渉をゆだねておくのは不適切であるとして、平成九年二月、被告名古屋管理職ユニオンに対し、Sに対して真摯な謝罪をすること及びファイザー製薬セクハラ解雇問題を被告東京管理職ユニオンに全権委任することなどを求め、これが受け入れられないのであれば、被告名古屋管理職ユニオン所属の組合員は、被告東京管理職ユニオンを脱会し、新組合を組織して行動するよう提案した。

これに対し、被告名古屋管理職ユニオンは、同年三月初旬ころ、被告東京管理職ユニオンに対し、右提案を拒否する旨通知した。そして、原告ら及び戊委員長らは、被告東京管理職ユニオンから脱退することをやむを得ないとして、戊委員長を執行委員長、原告甲野を副執行委員長、原告トミー及び原告乙野を執行委員などとする「名古屋管理職ユニオン」(以下「新名古屋管理職ユニオン」という。)を結成しようとしたが、新名古屋管理職ユニオンは現実に結成されるには至らなかった。

そこで、被告東京管理職ユニオンは、名古屋管理職ユニオンに対し、同月六日付け文書(甲三三、以下「三月六日付け文書」という。)を送付し、「被告名古屋管理職ユニオンは、三月一五日までに速やかに大会を招集して、被告東京管理職ユニオンと別途の組織を結成すること。」、「被告名古屋管理職ユニオンに所属する全組合員は、被告東京管理職ユニオンから脱退すること。」、「右の組織的手続が実施できない段階で、被告名古屋管理職ユニオンの名称でファイザー社に対して団体交渉を申し入れることがあれば、被告名古屋管理職ユニオンの団体交渉権を全面的に権利停止する。(ただし、権利停止の理由は、ファイザー製薬問題とともに、平成八年一月以降、被告東京管理職ユニオンに対する組合費が支払われていないことにもよる。)」などと通告した。

また、被告東京管理職ユニオンは、被告名古屋管理職ユニオンに対し、被告名古屋管理職ユニオンのファイザー製薬に対する同月六日付けの団体交渉申入れは、権利停止状態にあるため無効である旨通知したが、被告名古屋管理職ユニオンは、同月一九日ころにも、ファイザー製薬名古屋事業所に対し抗議行動を行ったりした。

(甲一四、三〇ないし三七、四〇、乙一六、二一、二六の7)

ハ そして、被告東京管理職ユニオンの設楽書記長(以下「設楽書記長」という。)及び森園副執行委員長(以下「森園副執行委員長」という。)が、平成九年三月二四日、被告名古屋管理職ユニオンを説得するために名古屋を訪れ、ファイザー製薬セクハラ解雇問題等について緊急会議を開催したが、右会議は物別れに終わった。しかし、その後、戊委員長は、方針を一転し、同月二七日、被告東京管理職ユニオンを訪れ、ファイザー製薬セクハラ解雇問題は被告東京管理職ユニオンに一任する旨約束した。

しかして、右の戊委員長の行動を知った原告甲野らの要求により、同年四月二日、被告名古屋管理職ユニオン執行委員会が開催され、戊委員長がなした右のファイザー製薬セクハラ解雇問題一任の件につき審議がなされた。原告甲野らは、戊委員長の被告東京管理職ユニオンに対する右の約束に対してかなり強固に反発していたが、執行委員会としては、これまでのファイザー製薬との交渉経緯や、ファイザー製薬セクハラ解雇問題の当人である丁野自身が早期解決を望んでいたことを考慮し、被告東京管理職ユニオンから問題解決協議の進行状況について順次報告を受けることを条件として、ファイザー製薬セクハラ解雇問題を被告東京管理職ユニオンに一任することを了承した。

(甲一四、乙一六)

(2) 原告らの行動について

イ 「わだつみ」と題する文書を送付した件等(甲一五の1、一八、乙一六、二二、証人細野、原告丙野本人)

原告甲野は、平成九年四月二日のファイザー製薬移管決議後、以前から戊委員長の言動に不信感を持ち、右決議にも反対していた原告丙野、原告乙野、原告トミー、その妻乙川らのうちの数名、あるいは全員、ときには原告甲野と親しい関係にあったST合同労組の丙川を含めてしばしば会合をもち、ファイザー製薬セクハラ解雇問題について意見交換をするとともに、戊委員長の組合運営は非民主的であるとして、自分たちの力で組合を変えていこうと話し合うようになった。

なお、乙川は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員ではなかったが、原告トミーの通訳として団体交渉や執行委員会に出席するとともに、ボランティアとして組合活動に参加していた。

そして、原告らは、同年四月五日、被告東京管理職ユニオンに対し、「我々丁野氏を支援する者は、(中略)丁野氏の団体交渉を貴組織に委ねることは自殺行為に等しいと判断します。」、「場合によっては決別する。」などと記載した差出人匿名の「わだつみ」と題する文書(乙二二、以下「わだつみ」という。)をファックスで送信した(なお、右文書のファックス送信票[以下「送信票」という。]は、後日、原告らが中心となって発足した「名古屋管理職ユニオンを正す会」から送信された文書の送信票[乙二三]と全く同一形式のものであったこと及び「わだつみ」の文書内容から、「わだつみ」は原告らが作成して送信したものと推認するのが相当である。)。

ロ シキシマパンに対するビラまきの件(甲一五の1、乙一、二、一六、原告甲野本人、原告丙野本人)

原告丙野は、進和運輸が平成九年四月二一日に二度目の手形不渡りを出して事実上倒産したため、進和運輸を製品搬送の下請会社として使用していたシキシマパン本社前で、進和運輸の責任を追及するビラまきを行いたい旨戊委員長に申し出た。しかし、戊委員長は、シキシマパンが従前好意的に対応してくれたことを考慮し、シキシマパンに対してはまず話合いを実施すべきであるとして、これを許可しなかった。そこで、原告丙野は、戊委員長に対し、それならば組合としてではなく個人として抗議行動を行う旨述べて、「名古屋管理職ユニオン 組合員:丙野一郎」、「名古屋管理職ユニオン 当該:丙野一郎」と記載したビラ(乙一、二)をまくこととし、戊委員長に対し、当該ビラを事前にファックス送信した。

そして、原告丙野及び原告甲野は、他の親しい組合員や労働組合に右抗議行動への参加を呼びかけ、同年四月三〇日及び同年五月一二日、いずれも五名ほどの人数で、シキシマパン本社前において、不当解雇撤回ののぼりやST合同労組の組合旗を立てて、右抗議ビラをまいた。

なお、シキシマパンからは、被告名古屋管理職ユニオンに対し、右ビラまきについて苦情電話が寄せられた。

ハ ドライブイットに対するビラまきの件(甲一四、原告甲野本人)

原告甲野が、平成九年四月二八日、被告名古屋管理職ユニオンとドライブイットとの団体交渉で決められていた給料の仮払いが滞っていたことから、戊委員長に対し、ドライブイット取締役自宅前でのビラまきを要請したところ、戊委員長は、これを了承し、原告甲野に対し、被告名古屋管理職ユニオンからも右ビラまきへの参加者を派遣する旨述べた。

原告甲野は、自らも親しい組合員や他の労働組合に右抗議行動への参加を呼びかけ、同月二九日午後一時、被告名古屋管理職ユニオン事務所に集合した一〇名ほどの者(原告甲野の個人的要請により参加した三名ないし四名を含む。)とともにドライブイット取締役自宅前に赴き、予定どおりビラまきを行った。

ニ 五月五日付け文書の件

原告甲野は、平成九年五月五日、報道関係者に対し、五月五日付け文書を送付した。

右五月五日付け文書には、「現職復帰を希望していたが、戊は独断で金銭解決に動き、私は泣く泣く金銭解決した。」、「戊という人物は、弱い者を助けるという労働組合委員長の仮面をかぶった『企業ゴロ』であり、救いを求めて駆け込んできた労働者の人権を『バナナの叩き売りと同じ安売り』をして金を取ることのみです。」、「わしの言うとおりに従え。従わない者は除名すると脅かし、労働組合を自分の会社と間違え、商店のオーナー感覚で私物化しています。」、「労組ではなく営利を目的とした会社です。」、「(被告東京管理職ユニオン設楽書記長、被告名古屋管理職ユニオン戊委員長の)実態は、労働者を食い物にする『企業ゴロ』です。」、「報道機関として、(中略)修正した報道をして下さるようお願い申し上げます。」などと記載されていた。

(なお、乙一八の丁川名義の文書において、原告甲野が勝手に書き加えたことが明らかな文章の中には、「労働組合とは名ばかりの戊委員長個人の営利会社」、「戊委員長は当該である私の意思に反して(現職復帰を希望する)金銭解決に走り」、「組合を私物化した戊委員長」など、右の五月五日付け文書の表現と極めて類似している文章が複数存在しており、このこと及び当時の被告名古屋管理職ユニオン内部の人間関係からすれば、右五月五日付け文書は、原告甲野が作成したものと推認するのが相当である。)

ホ 新聞社訪問の件(乙三、一六、二一、二二、証人森園、被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎)

原告甲野、原告丙野及び丁野は、平成九年五月六日、中日新聞本社を訪問し、ファイザー製薬セクハラ解雇問題についての被告東京管理職ユニオン執行部及び戊委員長の考え方、姿勢に対する批判、被告名古屋管理職ユニオンの経理が戊委員長によって公私混同されていること、被告名古屋管理職ユニオンが戊委員長の営利会社化していること、そのため被告名古屋管理職ユニオンが分裂の危機にあることなどについて、記事にしてくれるように依頼した(なお、右認定に反する原告甲野及び原告丙野の各供述部分は、いずれも不自然、不合理であり、前掲各証拠に照らして措信できない。)。

被告東京管理職ユニオンの森園副委員長は、翌日、新聞社の関係者から、原告甲野及び丁野外一名が中日新聞本社に右の依頼に来たことを聞き、直ちにこれを戊委員長に連絡した。

なお、被告名古屋管理職ユニオンの経理は極めて杜撰で、組合の資金と戊委員長個人の資金とが区別できない状態になっており、平成九年三月八日時点で、組合員から納入された組合費のうち一一三万円が被告東京管理職ユニオンに納入されないままになっていた(甲一〇、三四、原告乙野本人)。

ヘ 組合員名簿の管理について

被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員名簿は、事務局の前田が管理していた手書きのもののほかに、パソコンで作成されてフロッピーに保存されているものと、ワープロで作成されてフロッピーに保存されているものがあったところ、平成九年五月二日、戊委員長が他の組合員らとともに岐阜県高山市へ抗議行動に行った後、右フロッピーが無くなっていることに気付いたが、当日、名古屋に残っていて事務所の鍵を持っていた組合員は原告甲野しかいないから、原告甲野が右フロッピーを持ち出したと思う旨供述している。

しかし、原告甲野は、組合員名簿は手書きのものしかなかった、したがって、自分が組合員名簿を保存したフロッピーを盗んだことはない、他の組合員に対する文書送付は、自分が平成八年一一月ころから始めた機関誌作りの際に、右手書きの名簿をもとにパソコンで作成した名簿を利用して行ったものである旨供述しており、右の原告甲野の供述と対比すると、被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎の前記供述はたやすく措信し難い。

そして、原告甲野が組合員名簿を盗んだことを認めるに足りる証拠は他に存在しない。

(二) 原告甲野及び原告丙野に対する資格喪失処分について(特に証拠を掲げる以外は、乙一六、二一、証人森園、被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎)

(1) 平成九年五月八日開催の臨時執行委員会(以下「五月八日臨時執行委員会」という。)に至る経緯

戊委員長は、平成九年五月七日、森園副委員長から、丁野及び原告甲野外一名が中日新聞本社を訪問し、被告名古屋管理職ユニオン執行部に対する誹謗中傷、ファイザー製薬セクハラ解雇問題に対する批判、被告名古屋管理職ユニオンが分裂の危機にあることなどを記事にしてほしい旨依頼したとの情報を受けた。

ところで、被告らはマスコミ先行型の労働組合であったため、被告東京管理職ユニオン及び被告名古屋管理職ユニオンの各執行部は、原告甲野らが他の報道関係者にも同様の依頼をし、これがマスコミに取り上げられた場合は、他の組合員が動揺し組織崩壊のおそれがあるとの危機感を強め、緊急に原告甲野らの組合員としての活動を停止しなければならないと考えた。

そこで、戊委員長は、同日、被告東京管理職ユニオン執行部と対応を協議し、原告甲野らの処分については、被告名古屋管理職ユニオン臨時執行委員会を開催し、緊急の仮の措置として、名古屋管理職ユニオン規約九条三号、五条ただし書(2)に基づく組合員資格喪失扱いとすること、原告甲野を臨時執行委員会に招集すると、同原告が臨時執行委員会での議論を歪曲してさらにマスコミ等に吹聴する危険性があるため、同原告を招集しないで臨時執行委員会を開催することを提案したところ、被告東京管理職ユニオン執行部もこれを承諾した。

なお、被告東京管理職ユニオン執行部及び戊委員長は、右の組合員資格喪失扱いについて、右取扱いは執行委員会の議決によるものであるから、今後の原告甲野らの行動如何によっては、執行委員会の決議で右取扱いを解除することも可能であると考えていた(甲七)。

(2) 原告甲野に対する資格喪失処分について

被告名古屋管理職ユニオンは、平成九年五月八日、原告甲野に対し弁明の機会を与えることなく臨時執行委員会を開催し、出席者全員の賛成により、原告甲野に対する資格喪失処分を決議した。

そして、被告名古屋管理職ユニオンは、原告甲野に対し、同月九日、先般の原告甲野らの行動が被告名古屋管理職ユニオンの規制を破り混乱至らしめるものであった旨記載した資格喪失処分決定通知(甲三)を送付するとともに、各組合員に対しても、同月九日付けの「お知らせ」と題する書面(乙一四)により、原告甲野が被告名古屋管理職ユニオンの規制を破る様々な行動をし、組合の混乱を図り、組合の分裂を企てたため、五月八日の臨時執行委員会で組合員資格喪失の決議をしたこと、事実確認を早急にし、あと一、二名の処置についても検討中であること及び原告甲野に同調して行動した場合、その組合員も処分の対象となる場合があるので十分注意することなどを通知した。

また、被告名古屋管理職ユニオンは、報道機関、支援労組や原告甲野の勤務先であるドライブイットに対しても、原告甲野を資格喪失処分にした旨通知した(甲九)。

(3) 原告丙野に対する資格喪失処分について

原告丙野については、五月八日臨時執行委員会の時点で、中日新聞本社を訪問したとの確認がとれていなかったため、事実確認ができた時点で資格喪失処分をすることとし、その手続は組合三役(執行委員長、副執行委員長及び書記長。以下、単に「組合三役」という。)に一任する旨決議された。

その後、原告丙野も原告甲野らとともに中日新聞本社を訪問したとの事実が確認されたため、組合三役は、原告丙野を資格喪失扱いとすることにした。そして、被告名古屋管理職ユニオンは、原告丙野に対し、平成九年五月一四日、同原告の行動が被告名古屋管理職ユニオンの規制を破り混乱至らしめるものであった旨記載した資格喪失処分決定通知(乙四)を送付した。なお、原告丙野に対しても、弁明の機会は与えられなかった。

そして、被告名古屋管理職ユニオンは、各組合員に対し、原告甲野を資格喪失処分にした時と同様に、原告丙野が同月一四日をもって組合員資格を喪失したこと、あと、一、二名の処置についても検討中であること及び原告丙野と同調して行動した場合、その組合員も処分の対象となる場合があるので十分注意することなどが記載された同月一五日付け文書(甲四)を送付した。

(三) 原告甲野に対する資格喪失処分後の原告らの行動について

原告らは、原告甲野に対する資格喪失処分後、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、それぞれ次の文書を送付した。

(1) 原告甲野は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員一二〇名ないし一三〇名のうち約七〇名に対し、平成九年五月一三日付けの「私は今回の不当な制裁に抗議します」と題する書面(甲八の1)を送付した(原告甲野本人)。

同書面には、処分の理由が明らかにされていないこと、本件に弁明の機会が与えられていないこと、執行委員の一人である原告甲野を除いて開催された執行委員会は無効であること及び組合規約を無視して制裁を加えたことなどが記載され、最後の部分に、「被告名古屋管理職ユニオンの組合員として、今回私に与えられたこのような私的な制裁を断じて許すことはできません。公平であり、民主的でなければならない組合内部で、今回このような不当極まりない処分が行われたことに対して、私は断固とした姿勢で抗議していく所存です。(中略)私の希望は、組合内部に民主主義を取り戻すこと、これ以外にはありません。皆様よろしくお願いいたします。」と記載されていた。

(2) 原告丙野及び原告乙野は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、平成九年五月一五日付けの「私たちは甲野組合員に対する、組合規約無視の不当な除名に抗議します。」と題する書面(乙五、甲八の2)を送付した。

同書面には、原告甲野が受けた処分が組合規約を無視したものであることなどが記載され、同書面の最後には、「ルールを無視し、恣意的に事を行うのであれば、独裁の謗りを免れ得ないでしょう。(中略)戊委員長は組合を私物化しています。(中略)組合に民主主義を取り戻しましょう。」と記載されていた。

(3) 乙川は、平成九年五月下旬から同年六月上旬にかけて、被告名古屋管理職ユニオンの組合員七〇名くらいに対して、「支援のお願い」と題する書面(乙一五)を送付した。

同文書には、戊委員長が、原告トミーに対し、安城学園の雇止め問題について全面的に支援すると約束していたにもかかわらず、原告トミーが同年五月一五日に仮処分を申請すると、「乙川さんは、甲野、丙川の一派だと疑っている。その二人が原告トミーの支援をしていくなら、私はできない。」などと通告したなど、原告トミーの雇止め問題についての戊委員長の態度に対する批判や、原告甲野に対する資格喪失処分に関して乙川が現に体験した事実などが記載され、同書面の最後には、「このような状態の中での提訴です。私共の事件を皆さんに理解して頂きたい。出来れば支援をお願いしたいとの思いでいっぱいです。私共も皆さんの抱えている問題を理解し今後も一緒に闘っていく所存です。」と記載されており、同文書は、基本的には、各組合員に対して原告トミーへの支援を依頼する目的で発送されたものであった。

(4) 原告甲野は、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、平成九年六月四日付けの「『解決が困難になると闇に消される名古屋管理職ユニオン』労働組合とは名ばかりの戊委員長個人の営利会社。私は許せません」と題する丁川名義の文書を送付した。

右文書は、丁川が原告甲野の依頼により、被告名古屋管理職ユニオンに入会した経緯、丁川の紛争解決がうまくいかず最近ではあきらめているとの心情及び戊委員長にだまされた方々とともに責任の追及と不正経理内容の解明を求めていくとの決意を記載して、原告丙野に郵送した同月二日付けの手書きの文書(甲四二)を基にして、原告甲野が、これに、前記標題及び「戊委員長は当該である私の意思に反して(原職復帰を希望する)金銭解決に走り」、「現在では、もう私の問題は組合内で語られることすらなくなりました。戊委員長は、私の問題が風化して行くのをまっているのでしょうか。」、「甲野さん、丙野さんの除名通知が舞い込み、それに対する反論文が再三郵送されてきました。どう見ても戊委員長の行った処分は組合規約からみても間違いであり、組合を私物化した戊委員長個人の判断としか見受けられません。」、「戊委員長は何を考えて空手形のような約束をしたのでしょう。」、「営利会社であり」、「労働組合は皆さんのものであり戊個人のものではない。」などの文章を勝手に書き加え、原文にあった戊委員長に対する批判の域を超え、戊委員長を誹謗中傷する内容のものとし、丁川の承諾を得ずに各組合員に送付したものであった。

(甲四二、乙一八、一九、原告甲野本人、原告丙野本人)

(四) 原告乙野及び原告トミーに対する資格喪失処分について(特に証拠を掲げる以外は、乙一六、二一、証人森園、被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎)

(1) 原告乙野に対する資格喪失処分について

原告乙野については、専従職員の立場を利用して、原告甲野らに被告名古屋管理職ユニオンの活動情報を漏洩している疑いがあるとして、五月八日臨時執行委員会でも審議されたが、右臨時執行委員会の時点では、これを断定することができなかったので、同原告に対しては、被告名古屋管理職ユニオンから脱退することを勧告し、今後新たな行動に加われば、組合員資格喪失扱いにすることもやむを得ないとして、同原告の処分については組合三役に一任された(乙一七)。

そして、原告乙野は、平成九年五月九日、戊委員長から、専従職員の退職と組合からの脱退を勧告され、その場ではこれを承諾したが、翌一〇日、戊委員長に対し、ファックスで、組合は脱退しない旨通知した。

その後、原告乙野は、原告丙野とともに、右(三)(2)に記載のとおり、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し文書を送付したため、同年六月一一日に開催された臨時執行委員会(以下「六月一一日臨時執行委員会」という。)において、資格喪失扱いとされた。なお、原告乙野に対しても、弁明の機会は与えられなかった。

そして、被告名古屋管理職ユニオンは、同月一二日、各組合員に対し、原告乙野の行動が被告名古屋管理職ユニオンの組織を混乱至らしめるものであったとして、名古屋管理職ユニオン規約九条及び五条を適用し、資格喪失扱いとすることに決定した旨通知した(甲五)。

その後、被告東京管理職ユニオンも、原告乙野に対する右の資格喪失扱いを追認した。

(2) 原告トミーに対する資格喪失処分について

原告トミーは、平成九年六月一〇日、被告名古屋管理職ユニオンの事務局から、翌一一日に臨時執行委員会を開催する旨の連絡を受け、同日、乙川とともに出席した。

右臨時執行委員会において、戊委員長が、原告トミーに対し、同年五月下旬から同年六月上旬にかけて、「支援のお願い」と題する書面(乙一五)を被告名古屋管理職ユニオンの組合員に送付したか否かについて確認したところ、原告トミーは、右文書の存在は知らない旨弁明し、乙川が、自分が原告トミーに相談しないで、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に送付したものである旨説明した。

しかし、戊委員長らは、原告トミーと乙川が共同で右文書を送付したものと判断し、賛成七票、棄権二票で原告トミーの資格喪失扱いを決議した(甲一三の2)。

そして、被告名古屋管理職ユニオンは、原告トミーに対し、同月一二日、同原告の行動が被告名古屋管理職ユニオンの組織を混乱至らしめるものであったとして、名古屋管理職ユニオン規約九条、五条を適用し、資格喪失扱いとすることに決定した旨通知した(甲六)。

その後、被告名古屋管理職ユニオンも、原告トミーに対する右の資格喪失扱いを追認した。

(五) 除名等要請決議について(乙一六、一七、証人森園、被告名古屋管理職ユニオン代表者戊三郎)

被告名古屋管理職ユニオンの執行委員会は、原告らの行動が今後もエスカレートしていく可能性が高いと判断し、平成九年六月か七月ころ、原告らの除名処分を被告東京管理職ユニオンに要請することを決議した。

他方、原告らは、被告名古屋管理職ユニオンを正す会を結成し、同年六月二六日、戊委員長のリコールを求める文書等を各組合員に送付した(乙二一)。

そして、同年七月二日、被告らは、連名で、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、本件名古屋臨時大会の招集通知を発送した。

ところで、当時、被告名古屋管理職ユニオンは、前記のとおり、被告東京管理職ユニオンから権利停止の処分を受けていたため、右招集に当たって原告ら及び丁野を除く組合員の権利停止処分は解除されたが、原告ら及び丁野については解除されなかった。そのため、原告ら及び丁野は、本件名古屋臨時大会の招集通知を受けなかったが、本件名古屋臨時大会の当日、会場に訪れて本件名古屋臨時大会への参加を要求したが、被告らはこれを拒絶した。

そして、同月二〇日の本件名古屋臨時大会において、被告東京管理職ユニオンに対し、原告ら及び丁野の除名処分を要請することが決議された。

そのため、原告らは、自らの労働問題について使用者側と交渉を継続するためにはやむを得ないとして、本件名古屋臨時大会当日、労働組合(独立ユニオンあいち)を結成した。

(六) 本件除名決議について(特に証拠を掲げる以外は、乙二一、二五、証人森園)

(1) 本件定期大会開催に至るまでの経緯

イ 被告東京管理職ユニオンは、被告名古屋管理職ユニオンの組合大会による除名等要請決議を受けて、本件定期大会までに、原告ら及び丁野に十分な弁明の機会を与え、今回の被告名古屋管理職ユニオンの問題(以下「名古屋問題」という。)に関する一連の事実を、客観的立場で公平に調査し、本件定期大会でその結果を報告するため、平成九年九月一二日、名古屋問題調査委員会を発足させた。

ロ そして、名古屋問題調査委員会は、原告ら及び丁野並びに戊委員長に対し、平成九年一〇月一日付け質問状(乙二六の4。以下「質問状①」という。)を送付し、同月七日までに上京して、同年四月五日以後の被告東京管理職ユニオンに対する誹謗中傷に原告らが関与しているのかどうか等の質問事項につき、名古屋問題調査委員会の席上で回答することを求めた。なお、質問状①には、上京のための交通費は名古屋問題調査委員会で負担すること、上京できない場合は名古屋問題調査委員会が名古屋に赴く用意もあること、本件定期大会において原告らが発言する場を設け、原告らの弁明書を大会参加者に配布する旨付記されていた。

これに対し、原告らが中心となって結成した名古屋管理職ユニオンを正す会は、名古屋問題調査委員会に対し、「我々に対する不利益、不公平なこれまでの取扱いに対する謝罪と不当な処分の撤回を求める。総てはそれからである。」などと記載した一〇月四日付け文書(乙二六の5。以下「抗議書①」という。)を送付し、質問状①記載の質問事項には一切回答しなかった。

そこで、名古屋問題調査委員会は、原告ら及び丁野に対し、同月八日付け質問状(乙二六の6。以下「質問状②」という。)を送付して、再度、質問状①の質問事項への回答を求めるとともに、同月一八日までに弁明書を提出することを求めたが、原告ら及び丁野からの回答はなく、代わりに、名古屋管理職ユニオンを正す会が、名古屋問題調査委員会に対し、「我々に対して『公平であり、公正である』と主張するのであれば、調査委員会が行わなければならないのは、まず、我々に対する謝罪と処分の撤回及び奪われた権利の補償をすべきである。我々は組合員資格をめぐって裁判を起こしており、我々と管理職ユニオン執行部とは敵対関係にある。」などと記載した同月一八日付け抗議書及び釈明要求書(乙二三、以下「抗議書②」という。)を送付し、同書面において、本件資格喪失処分、本件名古屋臨時大会、除名等要請決議の根拠等について釈明を要求した。

そのため、名古屋問題調査委員会は、原告ら及び丁野に対し、同月一六日付け文書で、同月一九日に名古屋問題調査委員会が名古屋に赴き面談調査を実施することを伝え、名古屋市内のホテルを面談場所として指定したが、原告ら及び丁野は来なかった。また、名古屋問題調査委員会は、原告ら及び丁野に対し、同月一六日付け文書により、本件定期大会への出席を要請した。

さらに、その後、名古屋管理職ユニオンを正す会は、同月二八日付け「抗議書及び釈明要求書(2)」(乙二四。以下「抗議書③」という。)を送付して、名古屋問題調査委員会が抗議書①、②に回答しない理由を明らかにすることなどを要求したが、名古屋問題調査委員会の質問事項については一切回答しなかった。

(2) 本件定期大会における本件除名決議について

イ 被告東京管理職ユニオンは、平成九年一一月一日、本件定期大会を開催し、出席した各代議員に対し、原告らの処分を検討する資料として、質問状①、②、抗議書①、「名古屋問題調査委員会報告書」(乙二六の7)、被告東京管理職ユニオン作成の「『名古屋支部問題』についての提案」と題する書面(乙二六の1。以下「提案書」という。)等の資料を配布した。

(イ) そして、右の提案書には、原告ら及び丁野については東京管理職ユニオン規約三六条二号、三号に該当する行為があったため、同規約三七条、三八条に基づいて除名処分をすべきであるとし、その除名理由として次の四つの事由(ただし、要約)が掲げられていた。

① 新聞社を訪れ、被告東京管理職ユニオン及び被告名古屋管理職ユニオンを誹謗・中傷した。

平成九年五月、丁野、原告甲野、原告丙野の三名が新聞社を訪れ、被告名古屋管理職ユニオンが分裂しているので記事にしてほしいと依頼した。また、五月五日付け文書を報道関係に配布し、被告東京管理職ユニオン及び被告名古屋管理職ユニオンを誹謗・中傷した。

② 組合員の名を騙った文書を配布した。

平成九年六月、被告名古屋管理職ユニオンの組合員の名を騙り、戊委員長を非難する文書を被告名古屋管理職ユニオンの組合員に送付した。

③ 被告名古屋管理職ユニオンの決定に反する行動を行った。

ファイザー社争議は、平成九年四月二日、被告名古屋管理職ユニオンの執行委員会において、ファイザー製薬問題移管決議がなされているのに、原告ら及び丁野は、右決定を無視し、混乱を招くような抗議行動、文書の送付を続け、ファイザー社との交渉を妨げる活動をした。

④ 被告名古屋管理職ユニオンの組合員名簿を盗み出し、勝手に使用した。

原告ら及び丁野は、「名古屋管理職ユニオンを正す会」を組織し、盗み出した組合員名簿により、管理職ユニオンを誹謗・中傷する文章を流し続けている。

(ロ) また、名古屋問題調査委員会の報告書には、「調査の結果、原告ら及び丁野について、右提案書記載の①ないし③の事実が明らかになったこと」及び「名古屋支部の運営のあり方(公開性、民主主義的運営、組合費納入問題)についての問題性」、「本件名古屋臨時大会が原告ら及び丁野に対する資格停止を解除せずに開催されたことの問題性」などがそれぞれ述べられた後、結論として、原告ら五名の言動は通常の労働組合であれば十分除名処分に値すること、名古屋支部は、今までの運営のあり方、今後の活動のあり方について執行委員会及び組合大会で徹底的に議論すべきであり、原告ら及び丁野とともに戊委員長の責任問題も討議すべきであることなどが記載されていた。

ロ そして、原告ら及び丁野が本件定期大会に出席しなかったため、原告ら及び丁野不在のまま無記名投票が行われ、出席者総数五八名、投票者数五六名、賛成五三票、反対一票、白票一票、無効票一票の結果により、大会出席者の三分の二以上の賛成を得たものとして、東京管理職ユニオン規約三八条に基づいて本件除名処分が有効に議決された。

3  本件資格喪失処分及び本件除名処分の適法性について

右2の事実を前提として、原告らに対する本件資格喪失処分及び本件除名処分の適法性につき、以下検討する。

(一) 本件資格喪失処分について

(1) 手続的適法性

前記認定のとおり、本件資格喪失処分は、被告らの執行部において、原告らの行為をこのまま放置しておくと組織崩壊のおそれがあると判断し、被告名古屋管理職ユニオンの執行委員会が、被告東京管理職ユニオン執行委員会の事前又は事後承認を得た上、緊急の仮の措置として名古屋管理職ユニオン規約九条三号、五条ただし書に基づいてなしたものと認められる。

しかし、本件資格喪失処分は、次の各理由により手続的に違法であるというべきである。

イ 本件資格喪失処分は、実質的には統制違反行為に対する制裁処分であり、被告ら執行委員会の見解によっても、被告名古屋管理職ユニオンの執行委員会で本件資格喪失処分が解除されるまでは、組合員としての資格を喪失するものであって、右期間中における効果は除名処分に等しいものである。

ところで、労働組合の規約上明文の規程がなくても組合員に対する統制処分が可能であるとの見解に従ったとしても、一方で規約上に統制処分の要件及び手続きについての明確な規定を置いていながら、他方でこれと同視すべき処分を、その要件及び手続によらないで行うことはできないものというべきである。さもなければ、規約所定の要件及び手続を省略、潜脱して、より簡易に同一目的を達しうることを容認する結果となるからである。

すなわち、組合員にとって重要な事項である制裁に関する規定の解釈については厳格な態度をとるべきであって、組合員は、規約に定められた制裁の要件及び手続によらないで制裁処分を受けることがない権利を保障されているものと解するのが相当であるから、原告らに対し、名古屋管理職ユニオン規約九条三号、五条ただし書によって実質的な制裁処分を課すことはできないものというべきである。

そして、本件資格喪失処分が組織の混乱を避けるための非常緊急の仮の措置であったとしても、そのことから制裁処分の要件及び手続を省略、潜脱することが正当化されるものではないというべきである。

したがって、本件資格喪失処分は、右の観点から既に手続的に違法というべきである。

次に、名古屋管理職ユニオン規約五条ただし書は、「その他組合が除外を適当と認める者」を組合員から除外する旨定めているところ、組合員にとって組合員資格の得喪は最も基本的かつ重要な事項であること、右規定が「組合が」除外を適当と認める者と定めていること、名古屋管理職ユニオン規約一六条が組合大会の付議事項として、「(1ないし7省略)、8 組合員の表彰及び制裁、(9、10省略)、11 その他以上の事項に準じる重要な事項」と定めていることからすれば、右組合除外者の認定は、組合の最高意思決定機関である組合大会においてなすべきものと解するのが相当である。

被告らは、組合加入及び脱退の承認権が執行委員会にあることからすれば、右組合除外者の認定権も執行委員会が有しているものと解すべきである旨主張しているが、組合加入及び脱退は原則的に承認されるものであるのに対し、組合員資格の喪失は例外的な措置であって、両者は質的に異なるものである上、名古屋管理職ユニオン規約一九条は、「執行委員会は、大会において決定された事項及び規約に定められた組合業務を執行する。」と定めているのであるから、執行委員会の権限として明文で定められなかった組合除外者の認定権を執行委員会が有するものと解することはできない。

また、組合員資格の喪失は、その効果において除名処分と異ならないのであるから、その手続は、除名処分に準じて、本人に弁明の機会を与えた上でなすのが相当である。

そして、名古屋管理職ユニオン規約九条は確定的に組合員資格を喪失させる規定であるところ、本件資格喪失処分が緊急の仮の措置であるとしても、そのことから組合大会ではなく執行委員会が当該組合員に弁明の機会を与えることもなく、本件資格喪失処分をなし得ると解することは相当でない。

したがって、被告名古屋管理職ユニオンの執行委員会が、弁明の機会を与えることなく(ただし、原告トミーを除く。)なした本件資格喪失処分は、右の点からも手続的に違法であるというべきである。

(2) 原告らに対する処分事由の有無について

イ 被告らは、「原告らは一体となって一連の行為を行っていたのであるから、個々の行為を個別にとらえるべきではない。すなわち、原告らは、平成九年四月二日のファイザー製薬問題移管決議後、組合分裂を図る意図をもって、本来の執行部とは別の執行部を独自に結成したかのような行動をとり、本来の執行部の連絡体制を混乱させた。一部の組合員が組合の方針に反して行う活動は、分派活動として統制処分の対象となる。」旨主張している。

しかし、本件資格喪失処分に至る経緯は、前記認定事実のとおり、丁野のファイザー製薬セクハラ解雇問題についての団体交渉が難航し、戊委員長がSに対して脅迫的な手紙を出したりしたため、被告東京管理職ユニオンが右解雇問題を被告名古屋管理職ユニオンにゆだねておくのは不適切であると考え、被告名古屋管理職ユニオンに対して右解雇問題の全権委任を求めたのに対し、被告名古屋管理職ユニオンは当初これに強固に反対していたが、戊委員長が原告らに黙って右の方針を変更し、被告東京管理職ユニオンに右解雇問題を全面的に委任する旨約束し、平成九年四月二日、被告名古屋管理職ユニオンの臨時執行委員会においてファイザー製薬問題移管決議がなされたところ、原告らはそれぞれ以前から戊委員長の言動に不信感をもっていたが、右解雇問題についても被告名古屋管理職ユニオンが引き続き交渉すべきであるとの意見であったことから、その後、原告甲野を中心として、ときにはST合同労組の丙川も含めてしばしば会合をもつようになり、右解雇問題について意見交換をしたり、戊委員長の組合運営は非民主的であるとして、自分たちの力で組合を変えていこうと話し合っていたものであって、原告らは右の限度では一体となって行動していたものといえるが、それ以上に、共同して組合分裂を企てたとか、本来の執行部とは別の執行部を結成したかのような行動をとっていた事実を認めるに足りる証拠はない。

ところで、統制権の行使は、組合内部における統一と団結維持のために合理的かつ必要な範囲で認められるものであるところ、組合の決定には反対者も協力すべき義務があるから、いったん決定されたことに対する批判活動は、組合内部の統一と団結の維持が特に侵害されるおそれがないとの特段の事情がない限り、統制処分の対象になるものというべきである。これに対し、組合運営上の一般的事項や、いまだ決定されていない事情については、組合民主主義の観点からして、組合員の言論の自由は最大限に尊重されるべきであるから(名古屋管理職ユニオン規約六条三項、四項参照)、虚偽の事実を述べたり、事実を歪曲したり、中傷や悪意に満ちた個人攻撃と評価される場合を除き、執行部批判については、組合内部で行うものはもとより、新聞社等の外部に対して行われるものであっても、また、それにより組合内部に何らかの混乱が生じたとしても、統制処分の対象にはならないものというべきである。

そうすると、原告らがファイザー製薬セクハラ解雇問題について意見交換することは、いったん決定されたことに対する批判活動に繋がる可能性のあるものではあるが、単なる意見交換に留まっている限りは、組合内部の統一と団結の維持が特に侵害されるおそれのないものとして、あるいはいまだ制裁を課すほどの違法性のないものとして、統制処分の対象にはならないものと解するのが相当である(なお、「わだつみ」の件が統制処分の対象にならないことは、後述のとおりである。)。

また、原告らが戊委員長の組合運営を批判し、自分たちの力で組合を変えていこうとして会合をもつことそれ自体は、言論の自由として許容されるべきことであるから、これらの行為を原告らが一体となって行っていたとしても、これを分派活動であるとして統制処分の対象とすることはできないというべきである。

ロ 原告らが、平成九年四月五日、被告東京管理職ユニオンに対し、「わだつみ」をファックス送信したことは前記認定のとおりである。

右「わだつみ」の主な内容は、ファイザー製薬及びファイザー製薬労働組合に対する非難を述べた後、ファイザー製薬労働組合の方針に沿ったような被告東京管理職ユニオンの対応について、「ファイザー製薬に懐柔され、東京管理職ユニオンは弁護士まで動員して魂を売るのでしょうか。」、「この様な状況で丁野氏の団体交渉を貴組織に委ねることは、自殺行為に等しいと判断します。」などと批判した上、「……議論を尽くし、今後の対応を明確にし、名古屋管理職ユニオンとの確執を是正することを望みます。」、「今からでも遅くはありません。名古屋管理職ユニオン、我々と共に、原点に戻り共闘することを検討して下さい。」と結んでいるものであり、被告東京管理職ユニオンを激しく批判するあまり、その表現に行き過ぎと思われる点もあるが、原告らの意図は、ファイザー製薬セクハラ解雇問題に対する被告東京管理職ユニオンの対応について、真摯に再度検討してほしい旨求めているものと認められる。

右「わだつみ」は、いったん決定されたことに対する批判活動ではあるが、被告東京管理職ユニオンに再度の検討を求めて送付されたものであり、他の組合員やマスコミ等に送付されるのとは異なり、組合内部の統一と団結の維持が侵害されるおそれはないから、統制処分の対象にはならないものというべきである。

なお、右「わだつみ」には行き過ぎと思われる表現が存在することは前記認定のとおりであるが、中傷や悪意に満ちた個人攻撃とまではいまだ評価することができない。

ハ シキシマパンに対するビラまきの件

原告丙野が、シキシマパン本社前で個人としてビラをまくこととし、「名古屋管理職ユニオン組合員:丙野一郎」、「名古屋管理職ユニオン:当該丙野一郎」と記載されたビラを事前に戊委員長にファックス送信した上、これを二回にわたってまいたことは前記認定のとおりであるところ、右ビラは、被告名古屋管理職ユニオンの名義を用いたことにはならないかもしれないが、第三者に被告名古屋管理職ユニオンの作成と誤認されるおそれが強く、被告名古屋管理職ユニオンの意思に反するものと認められる。

しかし、原告丙野が、事前に戊委員長に右ビラを送付していることを考慮すると、本件資格喪失処分や本件除名処分に付するほどの違法性はないというべきである。

また、原告甲野及び原告丙野が、独自に他の組合員や他の労働組合に対して、右ビラまきへの参加を呼びかけたことも前記認定のとおりであるが、自己の労働問題あるいは知人の労働問題について、独自に他の組合員や他の労働組合に対して支援を求めることは自由であり、何ら非難されるべきことではないから、右の事実をもって、原告甲野及び原告丙野が別の執行部を結成したかのような行動をとり、本来の執行部の連絡体制を混乱させたとは到底認めることができない。

さらに、シキシマパンに対するビラまきの件は、原告丙野の個人的な労働問題に関するものであり、原告らが一体となって行動したものと認めるに足りる証拠は存在しない。

ニ ドライブイットに対するビラまきの件

原告甲野が、ドライブイット取締役自宅前でのビラまきについて、親しい組合員や他の労働組合に参加を要請したことは前記認定のとおりである。

しかし、原告甲野の右行為が、被告名古屋管理職ユニオンの組織系統を乱す不当な組合活動といえないことは、シキシマパンに対するビラまきの件の項において説示したとおりである。

また、ドライブイットに対するビラまきの件も、原告甲野の個人的な労働問題に関するものであり、原告らが一体となって行動したものと認めるに足りる証拠は存在しない。

ホ 五月五日付け文書の件

原告甲野が、平成九年五月五日、報道関係者に対し、五月五日付け文書を送付したことは前記認定のとおりである。

右五月五日付け文書は、事実に基づいた執行部批判の範囲を逸脱し、被告名古屋管理職ユニオンを「営利を目的とした会社」と断定したり、設楽書記長や戊委員長を「労働者を食い物にする『企業ゴロ』」と決め付けるなど、中傷や悪意に満ちた個人攻撃と評価せざるを得ないものであり、右五月五日付け文書が報道関係者に送付されることにより、被告ら、設楽書記長及び戊委員長の名誉が棄損されたことは明らかである。

したがって、原告甲野が五月五日付け文書を報道関係に送付したことは、統制処分の対象になるものというべきである。

しかし、原告丙野、原告乙野及び原告トミーが、原告甲野と一体となって五月五日付け文書を作成したり、これを送付した事実を認めるに足りる証拠は存在しない。

ヘ 新聞社訪問の件

原告甲野、原告丙野及び丁野が、平成九年五月六日、中日新聞本社を訪問し、①ファイザー製薬セクハラ解雇問題についての被告東京管理職ユニオン執行部及び戊委員長の考え方、姿勢に対する批判、②被告名古屋管理職ユニオンの経理が戊委員長によって公私混同されていること、③被告名古屋管理職ユニオンが戊委員長の営利会社化していること、④そのため被告名古屋管理職ユニオンが分裂の危機にあることなどについて、記事にしてくれるよう依頼したことは前記認定のとおりである。

ところで、右②は事実に基づく批判であるから許容されるべきものであるが、右①、④は、いったん決定されたことに対する批判活動であり、これを新聞記事として掲載依頼することは、組合内部の統一と団結の維持を侵害するおそれが高いから、統制処分の対象となる行為というべきであるし、右③は、中傷や悪意に満ちた個人攻撃であるから、これも統制処分の対象となる行為というべきである。

しかし、原告乙野及び原告トミーが原告甲野及び原告丙野と共謀して右の行為に及んだことを認めるに足りる証拠は存在しない。

ト 組合員名簿無断持ち出しの件

原告甲野が組合員名簿を無断で持ち出したとの事実が認められないことは前記認定のとおりであるから、これを原告甲野の処分事由とすることはできない。

チ 原告らの他の組合員に対する文書送付の件

被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、①原告甲野が、平成九年五月一三日付けの「私は今回の不当な制裁に抗議します」と題する書面を、②原告丙野及び原告乙野が、同月一五日付けの「私たちは甲野組合員に対する、組合規約無視の不当な除名に抗議します」と題する書面を、③乙川が、同年五月下旬から同年六月上旬にかけて、「支援のお願い」と題する書面をそれぞれ送付したことは前記認定のとおりである。

ところで、右①、②の文書は、原告甲野に対する資格喪失処分が手続的に問題のあることを他の組合員に訴え、その支援を得ることを目的としたものであり、文章中には、戊委員長を激しく批判するあまり、その表現に若干行き過ぎと思われる点がないではないが、いまだ批判活動の範囲を逸脱しているとまでは認められない。

また、右③の文書は、基本的に原告トミーへの支援を依頼するものであり、その中には、原告トミーの雇止め問題についての戊委員長の態度に対する批判や、原告甲野に対する資格喪失処分に関して乙川が現に体験した事実などが記載されているが、いずれも言論の自由の範囲内に属するものと認められる。

そうすると、右①ないし③の文書を他の組合員に送付した件は、いずれも統制処分の対象にならないものというべきである。

リ 丁川名義の文書の件

原告甲野が、被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対し、平成九年六月四日付けの丁川名義の文書を送付したことは前記認定のとおりである。

右丁川名義の文書は、原告甲野が原文にない多数の文章を勝手に書き加え、原文の戊委員長に対する批判の域を超えて、戊委員長を誹謗中傷する内容のものとし、これを丁川の承諾を得ずに他の組合員に送付したものであるから、丁川の名義を勝手に使用したといわれても仕方のないものであり、統制処分の対象となるものである。

そして、右の丁川の原文は原告丙野に郵送されたものであること及び原告丙野は原告甲野とともに中日新聞本社に赴いていることなどを総合考慮すると、原告甲野は原告丙野と共謀の上、丁川名義の文書の作成、送付に及んだものと推認するのが相当である。

しかし、原告乙野及び原告トミーが、丁川名義の文書の件に関与していたことを認めるに足りる証拠は存在しない。

(3) 小結

右(1)、(2)のとおり、本件資格喪失処分は手続的に違法なものであり、実質的な処分事由についても、原告甲野及び原告丙野についてはその一部が認められるが、原告乙野及び原告トミーについてはこれを認めることができないものである。

(二) 本件除名処分について

(1) 手続的適法性について

イ  本件除名処分は、前記認定のとおり、原告らに対して最終的な統制権を有している被告東京管理職ユニオンが、名古屋問題調査委員会を設置し、原告らに対して十分な弁明の機会を与えた上、本件定期大会において、東京管理職ユニオン規約に定められた制裁手続に従って決議したものであるから、手続的瑕疵は存しないものというべきである。

ロ 原告らは、本件除名処分にも手続的瑕疵がある旨縷々主張するが、次に述べるとおり、原告らの主張はいずれも認められない。

① 原告らは、被告名古屋管理職ユニオンが、平成九年三月一〇日時点で、被告東京管理職ユニオンに対する組合費を六か月以上滞納していたから、被告名古屋管理職ユニオンの組合員は自動的に組合員資格を喪失していたものであり、本件除名決議は非組合員に対する決議として無効である旨主張する。

しかし、被告名古屋管理職ユニオンは被告東京管理職ユニオンの下部組織であるから、組合員が被告名古屋管理職ユニオンに組合費を納入すれば、被告東京管理職ユニオンに対して組合費を納入したことになるのであって、戊委員長が右組合費を被告東京管理職ユニオンに送金していないにすぎないのである。

したがって、組合費滞納の事実は存在しないから、原告らの主張は採用できない。

② 原告らは、被告らの組織形態は、本部と支部の関係ではなく、上部団体と下部団体の関係にあるから、上部団体である被告東京管理職ユニオンが、下部団体である被告名古屋管理職ユニオンの組合員に対して統制権を行使することはできない旨主張する。

しかし、被告らの組織形態は、上部団体と下部団体の関係ではなく、本部組織と下部組織の関係にあり、被告東京管理職ユニオンが原告らに対する最終的な統制権を有しているのであるから、原告らの右主張は採用できない。

③ 原告らは、仮に、被告らの組織形態が本部組織と下部組織の関係にあり、被告東京管理職ユニオンのみが組合員に対する統制権を有していたとしても、本件においては、被告名古屋管理職ユニオンに統制権が委譲されていたと考えるべきであるから、本件除名処分をなすためには、再度、被告名古屋管理職ユニオンから被告東京管理職ユニオンに対して統制権の委譲手続がなされるべきである旨主張している。

しかし、被告らの組織形態からすれば、前記説示のとおり、原告らに対する統制権が被告東京管理職ユニオンに全く残らない状態になるように統制権を委譲するということは不合理である上、原告ら主張の各事実から、被告名古屋管理職ユニオンへの統制権委譲の事実を認めることもできないから、原告らの右主張も採用できない。

④ 原告らは、本件資格喪失処分の実質は除名処分であるから、右制裁をなした後、同一事由に基づいて再度本件除名処分をなすことは、一事不再理の原則に反する旨主張する。

しかし、本件資格喪失処分は緊急の仮の措置であったから、一事不再理の問題が生じる余地はない。また、本件資格喪失処分は、手続的に違法であって無効であるから、この点からも一事不再理の問題は生じないというべきである。

⑤ 原告らは、弁明の機会が与えられたとはいっても、それは形式的なものにすぎなかった旨主張する。

しかし、原告らが本件名古屋臨時大会に召集されず、また、右大会への出席を妨害されたからといって、そのことから弁明の機会が形式的なものであったということはできない。

そして、名古屋問題調査委員会は、原告らに対して質問状①、②を送付して面接調査の機会を設けたが、原告らは抗議書①、②を送付してこれに応じなかったため、さらに名古屋問題調査委員会は、弁明書の提出を求めるとともに、原告らに直接面接調査をするため名古屋に赴いたが、原告らは、抗議書③を送付したのみで、右名古屋での面接調査にも応ぜず、弁明書も提出しなかった上、本件定期大会での発言の機会も自ら放棄したものであるから、弁明の機会を与えられなかったとは到底いうことができない。

(2) 原告らに対する処分事由について

原告乙野及び原告トミーに対する除名処分の事由が、いずれも統制処分の対象になるものではないこと、しかし、原告甲野及び原告丙野の新聞社訪問の件及び丁川名義の文書の件と、原告甲野の五月五日付け文書の件がいずれも統制処分の対象になることは前記説示のとおりである。

そして、右行為の性質、態様及びそれがもたらした被告らの信用失墜、他の組合員の動揺の程度等を総合考慮すると、原告甲野及び原告丙野に対する本件除名処分は、これを無効としなければならないほど不当に重いものとは認められない。

(3) 小結

右(2)のとおり、原告乙野及び原告トミーに対する本件除名処分はいずれも無効であるが、原告甲野及び原告丙野に対する本件除名処分はいずれも有効というべきである。

二  争点2(本件資格喪失処分によって原告らが被った損害の存否)について

1  前記認定のとおり、被告らは、共同の意思に基づいて、本件資格喪失処分を被告名古屋管理職ユニオンの組合員、支援労組及び原告甲野の使用者に通知した。そして、被告らの右行為により、原告らはそれぞれ名義と信用を傷つけられたことが認められる。

また、原告らは、本件資格喪失処分を受けたことにより、それぞれ第二の三2(一)の(1)ないし(4)の損害(被告名古屋管理職ユニオン事務局への立入り禁止、本件名古屋臨時大会への出席拒否、被告名古屋管理職ユニオンによる団体交渉の停止、書類の返還拒否による損害)を被った(甲九、原告甲野本人、原告丙野本人、原告乙野本人、原告トミー本人)。

なお、被告らは、原告らは本件名古屋臨時大会の当日に新組合を結成して組合活動をしているから、組合活動上の不利益は存しない旨主張するが、右のとおり、被告名古屋管理職ユニオンの組合員としての活動ができなかったことは明らかであるから、被告らの右主張は採用できない。

2  右1の事実に、原告甲野及び原告丙野については統制違反の事実が一部存在していたこと等を総合考慮すれば、本件資格喪失処分によって原告ら各自が受けた精神的損害に対する慰謝料としては、原告甲野及び原告丙野がいずれも一〇万円、原告乙野及び原告トミーがいずれも二〇万円と認定するのが相当である。

そして、本件資格喪失処分は被告らの共同不法行為に該当するから、被告らは、原告らに対し、連帯して、右の各金員を支払う義務がある。

なお、被告名古屋管理職ユニオンは、平成一〇年七月一一日、規約改訂により被告東京管理職ユニオンから独立したが、右独立の前後を通じて労働組合としての同一性を有しているから、独立前の不法行為についても責任を負うものである。

3  原告らは、被告らに対し、原告らの名誉を回復するために謝罪広告の掲載を求めているが、右1で認定したところの本件資格喪失処分によって原告らが被った精神的損害は、金銭的な損害賠償で賄えるものであり、謝罪広告まで認める必要性はないものというべきである。

三  争点3(原告らの組合員資格確認の利益の存否)について

被告名古屋管理職ユニオンは、現時点において、被告東京管理職ユニオンから分離独立しているが、本件のように、下部組織が有効な組織変更決議により単位組合である本部から独立し、別個の単位組合を結成した場合、右組織変更決議に賛成した組合員は、当然に新単位組合の組合員となり、本部からの脱退手続をとらなくても、本部組合員の資格は失われるものと解するのが相当である。

しかし、右組織変更決議に反対した組合員、あるいは本件の原告らのように右組織変更決議に際して意思表示をする機会が与えられなかった組合員については、本部に対して脱退手続をしない限り、本部の組合員資格を喪失しないものと解すべきである。

すなわち、組合員が本部と下部組織との二重の組合員資格を有するときは、支部組織が本部から団体で分離独立する旨の決議をした場合、本部が組合員の個人加盟、個人脱退を原則としている以上、組合員個人の本部組合員としての権利も保障されなければならないから、右分離独立決議に反対した組合員、あるいは右分離独立決議に際して意思表示をする機会を与えられなかった組合員についてまで、団体としての分離独立の効果を及ぼし得ると解することは相当でないからである。

そうすると、原告乙野及び原告トミーが被告ら双方の組合員資格の確認を求めている本件においては、双方の組合員資格を確認する利益が認められるというべきである。

なお、原告らは、本件名古屋臨時大会の当日、独自に労働組合を結成しているが、これは、被告名古屋管理職ユニオンから本件資格喪失処分を受けたために、自らの労働問題解決に向けて使用者との団体交渉等を継続するためにやむを得ず結成したにすぎないものであるから、右労働組合の結成によって、被告らの組合員資格に対する確認の利益が失われるとするのは相当でない。

第四  結論

以上の次第で、原告らの本訴請求は、主文一項ないし五項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言について同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・林道春、裁判官・田近年則 裁判官・松岡千帆は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官・林道春)

別紙謝罪広告目録(一)、(二)<省略>

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